東京都刊行「東京の伝統工芸品」より 現代の名工 野村國俊 作 「賀茂之競馬図」(中央区重要文化財指定)
◆ 江戸刺繍とは
東京の刺繍屋さんに代々秘伝を含み継承されてきている、それぞれ専門分野(和服・装束・舞台衣装・旗・幕・化粧まわし・神社仏閣調度品・山車・縫い紋等)の刺繍職人の技です。
日本刺繍を業とする東京刺繍協同組合が昭和62年7月に東京都伝統工芸品産業として認定を受けるに際して、当組合の構成員が東京を産地としているところから『江戸刺繍』を命名して江戸から東京への歴史的継承の意味を調和したものです。
◆ 沿革と特徴
刺繍とは、様々な色糸を用いて布地の表面、または表裏両面に絵画や模様などの図案を繍い表すことで、我国に現存する作品の最古のものは飛鳥時代推古30年(622)の国宝「天寿国繍帳」(奈良・中宮寺所蔵)です。
装飾としての刺繍は平安時代以降で、公家社会を背景に男性の束帯や女性の十二単などの衣類に刺繍を施し豪華さを競った。
安土桃山時代には刺繍だけの主体性刺繍から、箔・染・絞りに刺繍が併用されそれぞれの特色を活かした相互性刺繍も多くなってきました。
江戸時代に入り町人階級の衣類にも刺繍が施され、次第に豪華・高価になっていったため、幕府から何度も金銀の使用を禁止する倹約令が出されたが江戸幕府の繁栄とともに江戸刺繍は栄え今日に至っている。
◆ 伝統的な技術・原材料は
- 生地の上にすべて手作業で繍加工をしたものであること。
- 刺繍糸は絹糸、本金糸、本銀糸、平金、平銀、紛金、紛銀、漆糸を使用したものであること。
- 繍下地は絹織物または麻織物等を使用すること。
◆ 特色は
- 2〜3cm程の短い刺繍針を使う。
- 布地は専用の日本刺繍台あるいは角枠に縦横をしっかりと張る。
- 右手は布の上、左手は布の下で針を持ち替えて繍い進む。
- 使用される糸は主に絹糸で、縒らない(平糸または釜糸)で繍う場合と自分で甘縒・辛縒・変り縒りに縒り上げ、図柄に合わせながら制作していく。
◆ YouTube ― 台東区商工課企画
下町に息ずく伝統の技 ”江戸刺繍・現代の名工〜野村 國俊〜”
- 糸染めから伝統的な技術、原材料、繍い技法、糸縒り技法等、江戸刺繍の作品の完成まで、細部に渡り収録されている。